蕎麦とふりかけ

過日。某所で蕎麦を食べたあと、某スーパーでふりかけを買う。
むろん日本蕎麦。
ボクはビール党じゃあるけど、時間と気持ちにゆとりがあれば熱燗とっくりの首かたむけて、ジワジワやってから蕎麦をいただきたいと… 願望だけは常とする。
ざる、盛り、せいろ… この呼称判別がいまだよく判らないけど、出来たら昼間がいい。ゆったり、時間を肴に蕎麦前(日本酒)出来たら最高、だ。


その昔、NHKの『御宿かわせみ』で中村橋之助高島礼子を前に、燗酒と蕎麦をやってるシーンがあって、その時、彼が蕎麦つゆをほとんどつけないのを見て、ほんの僅かに湿らす程度というつけように、
「!」
いたく感心させられたけど、真似は出来ない。
蕎麦と蕎麦つゆの量的バランスをどう考えるかで、コトの運びはまた違うんだけど、お江戸の"粋がる"には、
「どうすればカッコ良くみえるか」
を芯にして、そのためにゃシンボ〜我慢もいとわないというのが含まれているようだから、そこが食の光景として大事な要素たれば、ボクのようにチャポンとつけちゃうのは"無粋"の極みであろうが… 好みの問題、しかたない。
蕎麦の風味を味わうというところは江戸人と変わらないけど、ボクは蕎麦とつゆとの合唱をば好むタチなのだ。

江戸時代後期から大正の半ばまで、江戸・東京ではどの町内にも2軒くらい蕎麦屋があるのがアタリメ〜だったようで、それじゃまるで今のセブンイレブンのはびこりと変わらないんだけど、コンビニじゃ〜なくって蕎麦屋というのが、いささか羨ましい。
蕎麦湯がお江戸での"発明"なのかどうかは知らないけども、ほんの僅かに使われるだけのおつゆを湯割りしちゃうのは、なんか利にかなってるように思うし、ぜんぜん関係ないのかも知れないし、そんな謎を解答もないままゆったり考えつつの蕎麦前が、とにかくも、イイじゃ〜ないですか。


さて、ふりかけ。
今月はじめの呉で「旅行の友」の旨味に気づいてしまって、ほぼ同時期にTVで永谷園のCMをみてしまって、この2つの"しまって"で、「超ふりかけ」を買ってしまったのだった。
そのパッケージ写真では、御飯がとん切っているのか、あるいは、ふりかけが山となっているのか… いささか判然としないけど、実際にふりかけてみると、フレーク状の中身が通常のそれに較べて随分に大きいから、たしかに、すぐにうずたかい山にはなる。
ふりかける、というよりも、ゾゾッと袋から落ちてくるといった感じ。
これをして、"超"なのか、お味が"超"なのか… そこは判然としない。
想像力を総動員して焼肉とこの「超ふりかけ」を重ねようとしてみたが、すぐやめた。
当然ながら、焼肉の代用じゃない。これはコレ、"超"の名のふりかけ以外のナニモノでもなくって、その上でもなければ下でもない。
質的なものというより量的な転換を頭に浮かせ、ゾゾッとふりかけてしまうのが、"本作"の醍醐味とみた。
だから、正直、"粋"はないぞ。
むき出しの食の欲望をまずは満たすべく方向で創られたと思える製品。パッケージ写真はそのストレートな表現だろ〜ね。
だから、江戸時代の初期の蕎麦にみられるファストフードな位置づけと、このふりかけは大差ない…… などと理屈を云うほどのものでなし。
御飯をおいしくいただく方便の1つとして、2袋めを買ってもイイね、これは。

我が国には、「日本ふりかけ協会」という業界団体があるそうだ。
業界の団体なんだから、永谷園丸美屋も田中屋も加盟しているに違いない。
大いにガンバッてもらい、「50歳になった方にはもれなくお好きなメーカーのふりかけプレゼント」とか是非やってもらって、御飯を美味しく食べさせて欲しいな。
だいたい、「日本ふりかけ協会」という名がいかすじゃないの。
何をしているのだろうか、と思ってしまうようなインパクトもあるし、「世界ふりかけ協会」じゃないところもイイですな。多国籍ワールド・ワイドじゃなくって、あくまでニッポンという地域限定で「これ文化ですねん」な重きがあるようでね。
なので、せっかく協会をつくってらっしゃるんなら、もっと、大いにアピールくださってもよろしいかと。
御飯を美味しくいただく魔法の食品、てなアンバイで誇大盛大に吹聴くださって御飯文化に是非ご貢献を願いたい。


実はボクは卵かけ御飯を好まない。
けども、生卵をお醤油に溶いて啜るのはヒジョ〜に好きなのだ。
小さな器の生卵を啜って、御飯を直後に口に運ぶのを… 王道としているのだ。
御飯のやや硬い感触と溶けて粘い卵の滋味感覚を茶碗の中で混ぜちゃうのじゃなく、口内にて、混ぜ合わせを知覚するのを王道としているんだ。これは妙味、だよ。
要は、卵は卵、御飯は御飯、と別けているのだけども、で、こたびは… そこを、ふりかけのチカラでもってジョイントしてもらえないかしら? と、思ったりするんだよ。
これは混ぜてはいけない。
御飯・中央に卵・たらりとお醤油・その周辺にふりかけ。 ← ちょっと思い描いてみてくだされ。
この3段重ねを味わう。
したがって、ふりかけ成分には卵は不要。たぶん秘訣はやや塩分多めなふりかけ。
御飯の旨味と生卵の旨味を引き立てつつも、かつ、ふりかけ自身もチョイと存在を誇示しての3重3層の味わいを具現すべくな新製品開発を… 「日本ふりかけ協会」さんにお願いしたいね〜。
ふりかけの"乾燥感"が加わることで、御飯の粘い質感と卵のねっとり感がいっそう多層に広がるような… ふりかけワールドの新たな地平だよ… と、思うんだけどな〜。
なんかそうなると、お茶碗も渋いのが欲しくなるけど、"粋"ってほどでもない。まだそこまでボクは成長していないし、成長できないような感が濃厚…。


けどね。
近頃、「コメ喰いて〜」なるモノ言いが若い人の口から出るようだけど、これはいけませんなぁ。だんこ、いけません、と感じるんだ。
成長以前の… 貧寒だよ。