ジャム
今年もまたユスラウメのジャムを造った。
昨年は横着をして前年のラベルを貼りつけたのじゃあったけど、今年は新規にラベル更新。
するとなんだか、パンにのっけて食べてしまうのがちょっと惜しくなるような、そんな… "ボクちゃんが作ってさ〜"な、所有の満足を味わう。
ラベル１つで自己満足の度合いが急上昇するのもオカシイし、そこのところは自身で警戒してる、いわばジコチュ〜な感覚でもあるんだけど、フッと、
「消費する」
という一語がいまいましい感じに思えたりは、する。
"消費"という単語は、どうも好きでない。
事実、アレコレを消費するわけじゃあるけど、消して費やす… という２つの漢字の組み合わせがカンジ悪い。
こういう"手作り"でテマヒマかけた瓶詰めを目前にすると、余計…、テマとヒマもが消費の内というニュアンスで消され費されるようで。
雲のような水面
岡山市東区の沼という地名にある池。
県道250号線のすぐそば、けっこう大きな池。
池の東側畔に二番館という喫茶店があって、これはもう30年くらい前からあるようだけど、その反対方向、西側畔には五番館という古着屋がある。
二番館と五番館はまったく関係ない店だけど、池をはさんで、たまたまそんな名で鎮座してるのが何だかオカシイ。
某日、その二番館でお茶しつつ、窓の外に拡がる水面を眺めながら、ＨM嬢が、
「これって… 沼よね」
そういったのでこれまたオカシかった。
「いや… 沼は地名で… 池は関係ね〜だろう」
と笑い、あとで調べたら、この大きな池は青津池というのだった。
ひじょうにビッシリたくさん水草（ウキクサ）が茂ってるのは、これは異常繁殖なのだろうか？ それともこれがナチュラルというものなのだろうか？
ちょっと空恐ろしくなる程の繁茂っぷり。
その空恐ろしさに、昔の東映動画『シンドバッドの冒険』を思い出す。
宝島を探す旅に出たシンドバッドや姫が乗る船が、ある時ある夜、無風の奇妙な海域に入り込み… 動けなくなる。
暗い画面の中、無数の藻が雲のようにわいて、船にからんでいく。
やがて燐光めいた妖しい光を伴い幽霊と幽霊船が現れる。
そこでシンドバッドは霊を慰めるため小さなハーブを奏でながら鎮魂歌めいたのを唄う。
そんなシーンを、青津池にかさね、束の間、こっそりチョット愉しむ。
いや、実際のところ、これほど繁茂すると手漕ぎのボートでも前に進むのはヤヤ難しかろう。
頻繁に車が往来する県道沿いゆえチョット感じにくいけど、もし道路がなけりゃ、深閑と静まった真夜中は、けっこ〜怖い感触がわいて出るんじゃなかろうか、この池は。
怖いといえば…
クリストファー･リーが亡くなった。
彼の『ドラキュラ』はもう最高に怖かったな。
といっても、背筋ゾクゾクな日本的幽霊な怖さじゃ〜なくって、寝ているさなかに胸にクイ打たれるシーンが怖かった。寝込みを襲うとは卑怯なり… とはこの場合かんがえないけど、なにかこうドラキュラが気の毒に思えもしたもんだ。
『ドラキュラ』以後の彼の出演作では、ボクは意外や、悪役でない彼の姿を好きだったりした。
ビリー･ワイルダー監督の『シャーロック･ホームズの冒険』でのマイクロフト。
『ヒューゴの不思議な発明』での書店の主。
亡くなったけど今後も彼には映画の中であえる。
そして観るたび、彼は映画の中で十字架に苦しめられちゃ眼をむく。杭をうたれて何度も滅ぼされる。ジェームス･ボンドと永遠に対峙する。少年ヒューゴに永遠に本をプレゼント… し続けてくれる。
毎年、このシーズンになると必ず、
「ぁあ、もう、１年が半分過ぎちゃったのね」
と大輪を見つつ、そう思う。
そう思うのが習癖になっている。
いわば年の折り返し点を示す、句読点としての「。」
マルっこなボンボリに句読点がかさなる。
実家の庭には青淡いボンボリのようなのとヤヤぺちゃりとして花火が開いたようなのと２種が植わってる。
そのボンボリを幾つかもぎとって、活ける。
横のペコちゃんは全高が40センチあるヤヤ大きめなモノだけど、それが小さく見えるボリューム。
モクモクわきたった、ちょっと雲のよう。
この前、『クラウド･アトラス』という映画をDVDで観た。
なので… この活けにクラウドすなわち雲が連想される。
『クラウド･アトラス』はまた… ここでいずれ書こう、長々と。
しかし、写真では判らないけど、大輪を幾つと重ね活けるとヤヤ安定に欠く。
重心が上に来て、実は… ちょっとヘタに触れると… 花瓶ごと倒れそうになる。
クワバラクワバラ。
でも、アジサイは日持ちがいい。これがチューリップだとかだと、ただの１晩でゴムの伸びきったおばあさんのパンツみたいにだらしなくなるけど、アジサイは１週間ほどは劣化の兆候がみられない。
雲がわきたったような形状をしばし愉しめる。
なのでやはり、名付けるならこれは、クラウド･アジサイ。
紫陽花之雲。
