宇宙船とてTPO 〜スターウォーズ〜


スターウォーズ』シリーズは、後年の3部作はDVDすら持っていないけど、最初の3部作を今の感覚で番付すると、
1位 『帝國の逆襲』
2位 『新たなる希望』
3位 『ジェダイの帰還』
ということになるかな。さらに点数で申せば、86点、74点、49点… というような数字になるんじゃなかろうか。
とはいえ、『新たなる希望』は点数関係なしの"別格"扱いしたい気もある。


なんといっても、あの巻頭の宇宙船の追っかけシーン、スターデストロイヤーの巨大な美しさに点数は不用だろう。なによりCGじゃなくってミニチュアだもんな。そこが良かった。後々の回顧展などなどで"実物"のそれをマノアタリに出来る喜びは大きいや、
「ああ、コレがあれかぁ。意外と小さいのね」
といった"実物"とフイルム上の相違からくる振幅もまた楽しめるというもんだ。CGはそういうことが出来ないんでね。
その意味で、たとえ動きがぎこちなくとも、ボクは縫いぐるみのヨーダを愛し、CGのヨーダをさほど好まない。



インペリアル・シャトルという宇宙船が『ジェダイの帰還』に出てくる。
このデザインについて、ボクははるか30年前はひどく否定的な面持ちで眺めた。つまらなかった。
それがこの前、ベッドに横たわってるさなか、フイに頭角顕わにして、
「ミレニアム・ファルコンよりもカッコいいじゃんか」
180度転向して、ランクがアップした。
実にどってことのない、かつての仏蘭西の超音速機が想起される程度な、ありきたりなデザインであった筈なんだけども、そのありきたりで飛躍のない感じが妙に眩く光り出した。



ご承知の通り、皇帝が乗っている。彼とその取り巻きが乗ってデス・スターを訪問する。
かの勇壮な"帝國マーチ"のメロディと共にこれは堂々と登場し、デス・スター甲板上にズラ〜ッとストームトルーパーが整列し、その白色との対比も鮮やかな全身真っ赤なローヤル・ガードが皇帝を警護して、帝國の権勢っぷりを否応なく見せつけてくれた。
たぶんにシリーズの中での名シーンの1つだろうけど、顧みて評価するに、やはりこの船は優雅さがあって、新しいけど古くって、古いけどもまたいつまでも重厚ってな感がある乗り物だったというコトに気づかされた。
あくまで短距離間を移動するだけのシャトルとして描かれたそれに、ボクはなぜか、実にオーソドックスな、我が日本国皇室の、天皇が乗っている車を想起した。
特徴のない、良いとも悪いとも評することの出来ない範疇に置かれた、でも特別なものとして。



普遍とは何だろうか…、そこは判らないけども、流行りすたれでないデザインというものもまた大きいなと、そう思ったりしはじめて、そんな転向感覚を3枚翼のインペリアル・シャトルにボクは見ちまったのかもしれない。
だからま〜、それゆえ、このシャトルが実は貨物運搬輸送機という設定で、劇中後半、ご承知の通り、同型機が反乱軍側に捕獲されてハン・ソロ達が乗船という展開に、ボクは顔をしかめて… それで辛口な49点なのだった。
多層の星々を支配する皇帝の乗り物が貨物船と同型では… いけますまい。
銀河帝國に較べると遙かに小さい米国の大統領とて、専用車があるんだから。



たとえば、上の『天皇御料車』は、小林彰太郎の良心ある1冊で、平成前期頃の皇室の車輌に対して毅然とした意見が記されている。
下の写真は天皇のパレード(平成3年)の様子だけど、この車について氏は、嘆く。



すなわち、このロールスロイスコーニッシュ・コンバーティブル)は2ドアで、陛下の乗り降りはドライバー席を倒してというコトになるのだけど、これは社交界儀礼原則として有り得ないシチュエーションだと、氏は指摘する。
セレブリティには専用ドアがあるのが常識だ。
そもそもコーニッシュ・コンバーティブルはある種の階級にいるオーナー自らが運転を"愉しむ"ための車として造られている。パレードに用いるような車輌ではない。
ヨーロピアンな社交界ワールドでは、やはりそこはそれなりの基本というかTPOというか不文律があって、そこを現在の宮内庁は、財政難という問題とは別に、理解が浅いといった旨が書かれていて、この1冊、すこぶる勉強になる。
(皇室御用達のプリンスの開発秘話や正式輸入第1号(1952)のアルファロメオにいち早くも皇太子(現在の天皇)が乗って自らドライブして軽井沢へゴ〜した話、そしてまた、このアルファロメオ1台の走行に道中の信号は全て青になった事など… 資料価値満載の一書)



だから、ボクはジョージ・ルーカスに苦言を申しているワケだ。ハン・ソロ達が乗ることになる貨物船は別デザインが必要だったと。
そも、皇帝がたとえ秘密裡の作戦中の移動であるにしても、勢力として小っぽけな反乱軍にビクビク怯えてそれで貨物船を用いたとは…、
実にショボいではないか。
エンペラーの価値を下げてしまったのが『ジェダイの帰還』の大きな欠点だ。


7作めとなる今年12月公開の作品にこの3枚翼が登場するのかどうかは知らないけど、出てもまちがいなくCGだ。ま〜、しかたない。
007映画とスターウォーズ映画はもはや長〜く付き合ってるトモダチみたいなもんで、以上ながながと書いたけど、実際は評価は関係なしで観に出向く。
観に行くというより、"会い"に行くって感じだろう、ね。