鍋2つ

10月末を持って廃業した岡山駅前の旅館を借り切り、ながらく日本に住んでいたけど大いなる決心でもって12月末に母国モンゴルへ帰国を決めた人の、いわば2重の"お別れ会"。
といって別に寂しいワケもなく、夕刻6時より食べ始めた2つのお鍋はたちまちにお汁のみになって、もう一度、具が盛られ、クツクツ煮られ、それでもまたたちまちなくなるというアンバイで、日が変わる刻限前には、そこにラーメンまでが入って… お鍋2つは休む間がない。
かたや鮭中心のフィッシュ系、かたや鶏肉とツクネと野菜のお肉系。饗宴とはこれを指すんだろう。



旅館といっても、観光のそれでなく、ビジネスというよりは、商い… で岡山へやって来た人が宿泊する、ひと昔前の表現でいえば商人宿。
おそらく後20年もすれば、こういうテーストを味わえる旅館は日本から、消えてしまうのだろうな。
角川映画犬神家の一族』で石坂浩二扮する金田一が、こういうお宿の畳の部屋に腰を落ち着け、
「何がおいしかった〜?」
坂口良子の女中が聞くや、
「なまたまご〜」
と、応えたシーンを思い出す。
ただ名前は"那須ホテル"とシャレてたけど、風情はもう典型としての商人宿。
この味わいは、今のビジネス系ホテルじゃ〜、楽しめない。



旅館丸ごとを提供してくれたTちゃんと企画のEちゃんとお鍋担当のKちゃんに感謝しつつ、なぜか全員で食堂のテレビを眺め、昭和40年代のダンランみたいに、皆なでいっせいに画面指差し大爆笑という… マコトに妙な"お別れ会"だった。


ちなみにモンゴルの人は野菜を食べない、というのはホントである。
食べない… というか、ないのである。
なるほど、ある時期が来ればモンゴル平原は草原になるけど、それはヤギやヒツジやウマやウシの食料で、人は口にできない。おまけに遊牧者は定住しないんで1箇所でもって野菜を育てるというワケにいかない。
でも、そのヤギやヒツジをことごとく味わうコトで、お野菜成分はたっぷり摂取出来るらしいのだ。
乳茶や馬乳酒(お酒にあらず)が野菜の代わりとなるらしい。
草原の緑を食べて育ったヤギの肉や血には、そのグリーンなエキスがたっぷりという次第なのだ。
我が知友の骨格を眺めるに、お野菜グリーンにめぐまれホウレンソウやらネギやらを、子供のころ強制で食べるよう仕付けられたワタシどもより、ひょっとして、モンゴルの野菜ナシの方がイイのかな… と、そんな思いも少し湧く。
ただ、もちろん、モンゴルも都市化しつつあって、都市部では野菜の消費が増えてるようだから、この先どうなるか… わからない。
今この11月。モンゴルでは屠(ほふ)りのシーズンであるらしい。
必要数のみを素早くかつ丁重に屠殺し、その肉も皮も血をも、大事にし、近寄る冬に備えるらしい。



翌日。
MO:GLAで、フライド・プライドのライブ。
10月の下石井公園JAZZ UNDER THE SKY Vol.4 の効果テキメンというか、場内は人でみっしり埋まる。
前半ステージ終了後に楽屋をたずね、お2人に挨拶。
なので… かどうかは知らんけど、後半ステージではSHIHOさん、あんがいジャズフェスのことを連呼。



アンコールの拍手鳴り止まずの、この2人の呼吸の合わせ方はやはり良いなぁ。
ギターの横田さんには、不思議な大陸的オーラがあって、その波長にSHIHOさんの時にハスッぱな下町的ともいえる声がかぶさって、まさにこれ、フライド・プライドのサウンドとしか云いようもない、大陸的プレートと小島的プレートがかぶさって火山めいた炎をあげるみたいな… 高みに連れてってくれる。




翌日、今日。
朝からずっと、とあるコトのための原稿書き。
提出というか用立てるのはこの金曜… 間に合うのかしら、この進捗で。
なんか、こういう作業の時にゃ、外は雨… というシチュエーションを好むんだけど、きっとそれは拘束感を諦めな感じにすり換えるための方便なんだろな。
昼食に6Pチーズ。
と、それにしても近年、6Pはどんどん薄くなってないか?
7〜8年前は、この倍とは云わないにしろ、厚みたっぷりであったような…。
なんか損してるような気がしないではない。