お盆の蚊

 12日。朝の3時過ぎ、外に出て夜空を眺める。

 ペルセウルス座流星雨。

 ふとよそ見をした瞬間に、天井近くに取り付けて忘れていた画鋲が1つ抜け落ちたみたいな、

「んっ?」

 動いたような気配が何度かあったけど、クッキリ見えたのは僅かに3つ。

 うち1つはそこそこの尾をひいて、北寄りの空から南西に流れた。

 流星は大気に触れて熱っせられて見えるワケだから、距離としてはおよそ100~150Kmほど上空の出来事、瞬時の移動は、飛行機が移動していく様子を眺めるのとはケタが違う。

 その高速っぷりにただ感嘆するしかなく、願い事をたくすような時間はないけど、ま~、そこがおもしろくもある。

 外にいたのは15分ほどだったが、4ヶ所、蚊にくわれる。

 

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 お盆界隈の小庭。

 朝にしか咲かない花。写真のこれは10時半頃にはもう店じまいでしぼみかける。

 こういうのは植物園向きではない。来園者が来る頃には閉じちゃうから白昼はつまらない。けどま~、うちの小庭は誰かに見せようとしてるワケでないから構や~しない。夕刻になったら、また水をやり、朝にひっそり咲くたすけとしよう。

 

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 だいたいにおいて庭作業というのは朝か夕にヤルもんだ。

 これが蚊の活動時間に重なるからヤッカイだ。特に夕刻が。

 虫よけを手足にスプレーしても、蚊めらは実に巧妙狡猾、半袖シャツと腕の端境あたりで仕事する。しかもまったく手際がいい。

 複数個所をたいがいやられ、

「痒ィィィ」

 いらつかせてくれる。

 ボリボリ掻くと汗に沁み、それでいっそう、

「ぁぁ、もう~ッ」 

 苛立たせてくれる。

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 だいぶんと前、開高健は暑熱のアマゾン川の粘っこい空気感に満ちた『オーパ!』でもってそういった虫との格闘を克明に描き込み、笑わされるやら同情するやらだったけど、鮮烈でもあった。

 一斉蜂起のように寄ってたかり執拗にからんで、強烈な痒みを置き土産にするけれど、一定時間が来るとサッと引き揚げる、その店じまいの潔さに開高ともどもに感嘆させられたもんだった。

 似通う事を椎名誠も『十五少年漂流記への旅』で書いていた。

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 椎名は蚊の”名所”として、ブラジルとシベリアとアラスカをあげて、しかしそれ以上に強烈なのがいるカナダのベーカレイクから40キロほど離れた川沿いのツンドラ地帯を持ち出していた。

 そのあたりではスーパーマーケットで「蚊よけ服」というスペーススーツみたいな大げさなのを普通に売っていて、当初はジョークかと思ったけど、キャンプをはった場所にて、椎名いわく「5万匹」のそれが「陰険に黙ったまま煙のように濃厚にヒトに群がって」、「蚊よけ服」のたとえば顔面部分のファスナーをちょっと下ろした瞬間にはもう数十の蚊が服の中に浸透し、刺しに刺しまくって顔面が腫れ上がった様相を書いていて、いささか空恐ろしくさせられた。

 

 うちの小さな庭で味わうのは、開高や椎名が体験した1/1000程度の痛苦じゃあろうけど、たとえ一刺しであろうと、蚊は蚊だ、痛苦は痛苦で掻痒はそ~よ~、痒いったらナイんだった。

 

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 トム・ハンクスのほぼ独り芝居だった『キャスト・アウェイ』は無人島での生活っぷりを堪能させてくれ、木材をこすり合わせるだけでは火はおこせないコトをリアルに見せてくれたけど、ただの1匹の虫も出さず描かれずで羽根音もなく、チョット拍子抜けさせられた。

 メーキング映像でロバート・ゼメキス監督が語るに、意識的に虫の存在を消去し、それによって主人公の孤独を際立たせたというコトらしいけど、どうなんだろうな? むしろ虫に悩まされるのを描いた方がよかったよう思えてしかたない。

 たぶん製作時には、虫の存在の有無をどうするか、ケンケンガクガク意見がぶつかったに違いない。

 蚊はヤッカイだけど、あれこれ虫が生息しているのは、ファーブルを持ち出すまでもなく、自然の必然、生命サイクルの重要な役者なのだから、そこを消去したのは間違った選択だったよう思う。どう自然の中で生き延びるかをテーマにした以上、これは役者配分を間違えたといっていい。

 墜落して流れ着いたトム・ハンクス無人島にとってはエイリアン、空から落ちてきた侵略者であって、むしろ、その外来のニンゲンを駆除すべく自然がどう振る舞おうとするかを描き足せば、より面白くなったような気がしないではないが、記録映画じゃなく娯楽映画なんだから、煎じ詰めてもしゃ~ない。かえってまずくなる可能性が高いや。

 

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 お盆。

 毎度のことながら坊さんが来て座り、ちょいと拝んで茶をすすり、次の檀家にゴ~。

 毎度のことながら坊さんはピンポ~ン♪とベルを鳴らすものの、玄関先でこちらを待ったりしない。迎えに出る前にもう草履を脱いであがりこみ、応接間から仏間へと移動中。

 流星めいた高速にいつも苦笑させられる。

 これはきっと、こちらが供出のお布施の小額っぷりによる、いわゆる、「Time is Money」の原理かもとも思われるけど、坊さんに聞くワケにもいかないし、聞くほどのものでもあるまい。慣れ親しんだ慣習といってしまえば、いい。

 

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 墓参り前にホームセンターに寄って、小粒な玉砂利を購入。

 それを墓の周辺にまく。

 雨に流されたり、風化で小さな砕片になったりと、こういう小さい石の類いは気付くと数が減っている。10年くらいの単位で眺めれば20~30パーセントほどは減ってるような感触。

 小石が減るとそこに雑草が根をおろし、小さな枝葉を顔出しさせる。

 葉が出てくるさい、小石は微かながら移動もさせられる。

 だから微速度カメラみたいなので墓場を数ヶ月監視すれば、墓石周辺の土がモゾモゾ動くといった映像が撮れるんじゃなかろうか。

 

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 お隣りのお墓は除草剤が巻かれて草のクの字もないが、こちらは除草剤まかない主義。

 小石をまいても草は下から出てくるんだけど、ま~、そこがいいのさ。除草剤は「草葉の陰」さえ根絶やしだからね、ありがたくないのさ。

 と、それにしてもやたらに蒸し暑かったお墓。台風接近によるフェーン現象だろなぁ。午後より雨。

 

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 今日15日は敗戦記念日。ただいま台風は四国の端っこを通過中か? 今はそこそこの風と雨、電線がうなってる。午後からしばらくは荒れるかな。

 終日、部屋に垂れ籠めるっきゃ~ない。

 うちから100mほどのところをに鉄路があるけど、山陽新幹線も在来線も運行休止。きっと庭の蚊も本日は営業休止だろうさ。飛行しづらい風だろうし、なによりヒトが庭に立ってくれないし。

 

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 15日午前10時10分に撮影。東からの風にイチヂクの葉が難儀中。フウセンカズラはあんがい良く耐えてる。