久々のインディアナとフクロウ

 

 6月末の封切り時に、「早よ観に行こうや」と吠えていた柔道家。でも彼のマザ~が急遽の入院でややドタバタ。一瞬、ほんじゃ~単独で行こうかとも思ったけど、

「待てば甘露の日和あり」

 かもだ。

 それでズ~ルズルと鑑賞日を日延べし……、ヒズ・マザ~も快方に向かい、ようやく双方のタイミングがあって、映画館にゴ~した。

 

 久々にしてシリーズ・ファイナルらしきな映画(ハリソン・フォード主役版というイミで)

 これで終了かぁと惜しみつつ画面に喰い入り、

「フフフっ」

 柔道家って、どっかハリソン・フォードに面影が似てるなぁ、太めなズボンの履き方とかノッタリした歩き方とかも似てるなぁ、などとコッソリ北叟笑んだりした。

 

 ともあれ1981年の『失われたアーク』以後42年間も愉しませ続けてくれたシリーズなんだから、感謝の念もわいてくるわいねぇ。

 娯楽映画に感謝というのも妙だけど、気分として、やはりカンシャ以外の何物でもナシ。

 

 願わくば、TVシリーズの『ヤング インディ・ジョーンズ』を全巻Blu-ray化して欲しいなぁ。なぜかDVD化もされてない。何でじゃろ?

 

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 うちに帰って、おさらいに『失われたアーク』か『魔宮の伝説』を観ようかとも思ったけど、たまさか篠田正浩の『河原者ノススメ』を読んでいるさなかだったので、彼の1999年作品『梟の城』をDVDで見直した。

 

 

 原作は司馬遼太郎の実質的デビュー作。忍者の悲哀を描いた活劇だけど、篠田監督は身分卑しきモノとして差別されている乱波(忍者は昭和30年代に出てきた単語)という立ち位置を明快に彫り込んで1本の映画に仕立て直してる。

 

 余談だけど、福山のみろくの里にお城の模型がある。この映画で使われた聚楽第(しゅらくてい)だ。同所でロケもされているんで、ユカリの品として寄贈されたのかな。

 当初は一室あてがわれ大事にされていたけど3年ほど前に訪ねたさいは、なんだか隅っこに追いやられ、けっこう傷んでいてザンネンだった。

 

 篠田監督は芸能に関する著作も多い。わけても『河原者ノススメ』は河原者として差別されていた中世時代の芸能人を描いて秀逸……

 その差別意識が実は現在もしっかり染みついている日本人の姿を図らずも浮き彫りにして秀逸……

    

 

 本書では、『梟の城』撮影のさい、主人公の忍者たちが四条河原の芝居小屋界隈で暗闘するシーンで壬生狂言の音曲を使おうと狂言保存会に連絡したら、

「伝承している狂言重要無形文化財で、河原乞食の芸とはちがいます」

 と断られたというエピソードも紹介している。

 なるほど、今もって特権的な何事かに裏打ちされた差別意識が根ッコにあるんだな、この国には。

 

 芸能の人たちだけじゃない。

 藍染め作家とか職人は今でこそ大事な“日本の文化の担い手”とされ、一流な方々も数多いらっしゃるけど、中世の時代は差別された方々で、映画『梟の城』でも、その辺りの消息がチラリと覗える。

 アオヤという名で呼ばれ、「アオヤ人外ノ外」と蔑まれた彼らは、権力者に命じられて罪人を処刑する役目を強制されている。「穢れ」を背負わされているワケだ。

 下僕とか下人とか下忍とかいった単語がある通り、ニンゲンに「上」と「下」を作り、さらには……異質な者と見下し、総称として「かわらもの」や「かぶきもの」というポジションに置いて何の違和もおぼえなかったカタチのへんてこりん……。篠田はその辺りのケッタイさを沁ませて現在に至っている日本の芸能を本に綴っている。

 

 ま~ま~、そんな次第あって、『梟の城』を見直したんだった。

 ちなみに、という漢字を即座にフクロウと読めないのは、何でだろう? 毎度、

「えっと、カラスだっけ、トンビだっけ?」

 立ち止まってしまう。

  

 ともあれともあれ『梟の城』も娯楽映画には違いなく、最初に観た頃は主演の中井貴一に違和をおぼえたり、あざとい音楽効果にゲンナリさせられたけど、こたび見直して、

「そうか、篠田監督はこの映画1本丸ごと、あざとい音響も含めてあえて異質なるモノやらコトを前面に置き、その上でもって、被差別者も差別者も共々に同じ卓袱台の上で踊ってる滑稽をば見せたかったんか」

 整合ととのった交響曲なんぞはぶっ壊し、パンク一路だったのが映画『梟の城』だったんだな……、と想いなおしてコチラも姿勢変更。評価を一変させたりと……、映画2本立てでチョイと昂揚した1日でありました。

 

あ〜、えっと……、今想い出したけど、こたびのインディ・ジョーンズは笑わなかったなぁ。不敵に口元ゆがめ、

「俺を信じろ」

っぽい過剰な自信みたいなものが失せてたなぁ。まっ、老いたるジョーンズ教授を描いた映画なんで、もはや老境に自信の高慢は不要かとも思えもするけど……、そこ、不満だなぁ。老いてなおツッパる不屈をこの考古学者に……、見たかったなぁ。