足守から北上し、やや吉備高原に寄った山中に真星(まなほし)という場所がある。
そこに星神山があり、山頂に星神社あり。
初めて、訪ねた。
神社ながら、異界めいた雰囲気。
急斜な石段。
標高は450mほど。
絶景。はるか眼下に児島湾や小豆島や四国が見える。
鳥居から山門にいたる長い石段を登り、そこから拝殿までさらに長い石段。とても一気に登れない
何もかもが「星」……。
縁起書を要約すると、
「一千二百年以上前の御霜月の十三日(11月13日)の白昼、三つの霊雲降りて山中鳴動。覆うこと三十五日、その中に星のような光あり、怖れて誰も近寄らず。けれどこれを崇敬すれば土地の反映があるとの陰陽師の占いあり」
とのことで地域に星の名がつけられ、神社を落下点である山頂に置いた……、らしい。
かつては屋根瓦(またぎ巴かな?)の一部だったと想われるモノが山門の脇に無造作に落ちてた
本殿背後に大きな磐座(いわくら)があって、いかにもいかにもな雰囲気。むろん、その巨岩が隕石であろうハズはないけど、実に象徴的。
誰もいず、自動販売機の類いもいっさいなく、ひたすらに空に近い感触が心地良い。
訪ねたのはジリジリ焼かれるような暑熱の白昼だったけど、深閑とした深夜に訪ねたら、おそらく、かなり神秘的な面持ちになるだろうなぁ、山頂の闇とその上方の星々の光点が織りあげる無音の“縫製”の巧みにのまれるまま、それを纏う以外に何も考えられない溶けていく感触を……、愚察した。
3つの霊雲というのは隕石が落下中に3つに分離したのか?
三十五日の光というのは、35日ほど、山火事になったということか……。
真相はもはや追跡できないけど、ともあれ、1200年以上前に、ここで天文的異変があったのは事実なのだろう。真星という邑(むら)の名にしろ星神社という存在にしろ、そのことを証明しているようなもんだ。
隕石落下の伝承とそれを由来とする祠などは日本各地にあろうけど、この星神社の場所と規模は、希有。
(本殿の中に隕石が安置されているとの説もあるが、実態不明)
イチバン大きい磐座と本殿
ニバンめに大きい磐座と摂社
共に登った柔道家は足守に住まい、
「名は知っていたけど、訪ねたのは初めて」
という次第で、彼もまた感嘆ぎみ。
眼下を見下ろしたり、磐座に触れてみたりと、2人ともども、かの『2001年宇宙の旅』での猿人同様の頼りない振る舞い。
不明をまのあたりにしての、戸惑いめいた感じが濃くあって、
「なにやら神秘じゃね」
つい、つまらない感想を漏らしてしまうんだった。
が、一方で立地が立地ゆえ、先に書いた通り、空というか宇宙(そら)に近い感触がコトバにならない妙なアンバイの気分を湧かせてもくれるのだった。感受性の高いヒトなら、出向けばスピリチュアルな何事かをハートに刻まれるかもしれない。
車に向かう柔道家を山頂の境内から撮影。凄みある高低差。遠方に四国もみえる
ちなみに、柔道家は翌日夕刻に電話してきて、
「いやぁ、御利益ありましたでぇ」
と喜色ばむ。
星神社に出向いた夜に、パチンコにいって2万円ほど儲け、「ひょっとして」と翌日にも別のパチンコ屋さんにいったら今度は3万円ほど勝ったという。
当方はパチンコなどしないので、
「フンっ」
鼻先で笑ったけど、こっちは何ら御利益をおぼえないんで、ちっくら密かに羨ましがったり、訝しんだりする。
彼は賽銭箱に10円を投じ、こちらは100円玉を投げ入れたハズ。
御利益は、どうも……、額面ではないようで。