とっとり花回廊

 

 数日部屋にたれこめて、とある模型の下図作製をし続け……、ヤヤくたびれたので、FIATにハイオクたっぷり入れて鳥取に向かう。

 とっとり花回廊にいく。

 

 

 紅葉の入り。

 大山が典雅な借景としてドデ~ンと座り、実に絵になっている。

「ぁぁ、ここは岡山じゃ~ないぞ」

 と、妙に意識させられる。

 この数年たびたび山陰方面に出向いているけど、大山が視界に入るたび、この反応が起きる。ちょいっと不思議。

 ま~、それはどうでもよろしい。

 入園料800円。ここは四季に応じて価格が変わる。12月になると500円にダウンし花の最盛期の春は1000円となる時価扱いがおもしろい。

 

 ヘンテコな乗り物にのって20分ばかし、園内グル~リと1周。

 吹田の万博記念公園にも似たのがあって(下写真)、常にヒトがいっぱい乗っていてニヤリ笑ったけども、こちら花回廊はやや閑散、乗客少なし。

 最前列に座った関西から来たらしき2人組女性。動きだすや、「わ〜、見てみ、綺麗やわ〜」、「あれ、近所にもある木やでぇ」よ〜しゃべりまんねん、めちゃ笑うねん、おっきな声で。

 園内の丘の上。関西のおばちゃま2人、

「赤いの、まだ続くでぇ」

「なんぼ植えてんや、ギャハハハ」

 尽きることなし。が、サルビアという単語が出なかったトコロを察すれば、これがサルビアとは思ってなかったような。でもエエがな……、赤いのいっぱい見られたんだから。この丘はシーズンによって別の花々が植えられるらしいが、あきれるほど宏大。

 

 花シーズンの盛りだった頃、ここに出向く予定で朝起きたら今にも雨が落ちそうで、即座にネットで調べると鳥取は既に雨。降雨量も多しという情報なので、ガックリ消沈。

 出向くのやめて以来の探訪となったけど、花盛りの頃にこの列車まがいのヘンテコにのれば、四方八方カラフルだったろ~なぁ、惜しいコトしたなぁと思わないでもないけれど、晩秋の遊覧も、ま~イイもんだ。

 真っ赤なサルビア以外、へんに花を意識せずともいいし、むしろ季節の巡りを体感できて、イイもんだ。

 

 とはいえど、11月なのに日中の気温が高い。紅葉も遅れている感じ

 陽射しも強くTシャツ1枚で過ごせるアンバイ。歩くと汗ばむ。喉も乾く。

 11月なんだけど……、水の流れを眺めて、あえて涼む。

  
 

 

 ポール・スミザーが手がけた“ナチュラル・ガーデン”をはじめて見学。

 日本の山野ならどこにでも自生する植物たちを巧みにまとめ、我らニッポンジンが見えていなかったニッポンのカタチを見せてくれた彼のメダマの良さに、こたびあらためて感服。

    一見どこにでもありそうな日本の光景を、計画だててガーデンに仕上げている

 

 5~6年前、この英国人園芸家のことを教えてくれたのはK殿下だったけど、以後は、例えば線路脇で勝手にはえているススキとか、名を知らない雑草に眼が向くようになった。

 その良さに、なんでズ~~っと気づかなかったんだろう? というか眼に入らなかったんだろうか?

 灯台もと暗し、とは言い得てポンポコリン。

                  ススキの使い方がとにかく秀逸

      作庭したと感じさせないポールの、まさにナチュラルなガーデン作り。これは驚き

                ポール作庭のガーデンで紅葉中の1本

 

 かつて我らはラフカディオ・ハーンに日本の姿を教わり、今はポールに教わりと……、渡来者に足元を見られ恥ずかしい感じヒリヒリ。

 とかいって、自虐史観に身を委ねてるワケじゃなく、“外から”の声を素直に聴いてしまえる特性をもったニッポンジンもまたイイなぁ……、と薄らぼんやり思うんだった。凝り固まっていないんだねぇ、我らは。

 ま~、そんなコトはどうでもいい。

 大規模なパークの中でユッタリ時間を味わっているそのシュンカン瞬間が、愛おしい。

 

 時間を食む、とかいうけど、時間というのは御馳走なのだと……、この頃ようやく気づかされている。

 時間を潰す、とかいう表現もあるけど、きゃ~、もったいない……、と思わないではいられない。

 かといって、合理主義的有効活用のみの利潤追求みたいな時間なんて、くだらないもんの権化でしょう。

 70年代頃に開高健は、

悠々として急げ

 なる名句を産んだけども、もはや高度成長時代じゃ~ないんで、近頃はこの名句にヤヤ古色な時代性をおぼえる。

 なので、

悠々としてさらに立ち止まって良し

 と、時間と自分との距離を再考したりもして、時間の旨味の中にどんな甘みや辛みがあるんだろうかと密かに思わないではない。

 

 ま~、もっとも、自走して出向いた以上、アルコール類は呑めないという制約があって、これはかなりデッカク痛いわねぇ。

 吞んで運転はダメなのは至極当然にしても、ヒッチコックの『泥棒成金(1955年作品)ではデート・ドライブして小高い丘に車を停め、グレース・ケリーとゲーリー・グランドがバスケットに詰めたビールとサンドイッチを愉しみつつ互いの心の内を探るというシーンがあったけども、う、うらやましい時代だなぁ。

 ま~、しかたない。

 境港までドライブし、弓ヶ浜でノンアルコール飲料カニとろ丼を味わう。帰ったらまた模型に向き合うかぁ~~、ウフフフのフ。

 気分を刷新させるんだった。

                   別皿の一尾丸ごとの煮つけ

 次いでゆえ水木しげるロードも散策。数年前に来た時よりさらに店が増えてらぁ。

 で、唯一買った「めだま親父のつまようじ入れ」。これはナイス♥ 常に苦労を背負っているこのキャラクターの滋味が良く出ていると思えてねぇ。我が宅に来ても苦労を重ねてくだされ。