IS EVERYBODY IN?

 

 過日の芝居『わが友、第五福竜丸』。

 圧倒の情報量とゴジラを暗示する声佐野史郎のとどろきやらを並列に並べ散らしたマルチバース的手法の劇は、やたら集中力を求められたけど、観覧中に悪寒。

 もう寒くっていけない。集中できない。

 ラスト5分というあたりで我慢しきれず、外に出た。

 うちに戻って体温を測ると、あんのじょう、38度線越え……。

 いったん治りかけていたのがブリ返したようでガックリ。

 やむなくまた寝倒してみると、翌朝はケロリ。

 それで気をよくして水槽の水換えなんぞをやってたら、今度は息切れ……。

 は〜は〜セ〜ゼ〜。1歩進んで1歩後退、なんか不安定。

 

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  COMMANDの秋田直哉氏がポストカード複数枚を郵送してくれた。

 感謝。

 一目見てモディリアーニの『おさげ髪の少女』のパスティーシュと判る作品。

 岡山県立美術館での「エコール・ド・パリ展」での実物に触発された神田晃宏氏の絵を、カードに仕上げたようで、オリジナルとなる絵の他、直哉氏が文字入れした作品、計4種が刷られている。

 

 

 妙に印象に残るのは、本作がモディリアーニ作品の構図をそのまま借り入れているからゆえなのだけど、ただのパロディでなく、トレースでなく、新たなアートになっている点で、

「おほ~っ!」

 と、小さく感嘆符をうって、またしばし眺めていられる不思議なチカラがこの絵にあるからだ。

 

 モディリアーニが描いたのは少女だったけど、神田氏のこの娘は少女ではない。

 と、当方は勝手に思う。

 少女ではないが、年齢は不詳。

 というより、年齢という数字なんぞは越えた、澄んだ存在。

 この女性の下方に直哉氏が、

Is Everybody in?

 と、入れたことで謎めいた雰囲気がいっそう多層のものになっている。

 このフレーズはドアーズのジム・モリソンの曲からきているらしい。

「Is Everybody in? The Ceremony is About To Begin……」

 

 みんな入ってるかい? セレモニーが始まるよ~

 とでも訳すのがイイのだろうけど、カードとその文字を眺めつつ、この女性がライブ・ハウスの受付の女のコのように思えなくもない。セレモニーはすなわちライブだ。

 彼女の背後のややグリーンっぽい部分はドアであって、そこを開けたら、

「みんな、もう、入ってるぜ~」

 なのかも知れない、と風船みたいに妄想を大きくも出来る。

 あるいは、久しくクローズのままのCOMMANDの、店の復活を暗示しているような……、気がしないでもない。

 

 が一方で、べつだんCOMMANDを早く復活してくれ~とは、実は思っていない。

 オーナー直哉氏の気分次第でイイのだ。

 いっそ、こたびのポストカードには、店を閉じてはいるけど秋田COMMAND直哉の真髄有りや、店に縛られず闊達にしてらっしゃるトコロが仄かに垣間見られ、嬉しくもなっているのが当方だ。

 クローズのままゆえに、コマンド難民が発生しているのも判るけど、それは仕方ない。店のせいじゃなく、そこは個々人のハナシだ。

 そんなことよりも、クローズさせたままながら、秋田直哉は自身を探索し続け、堀り続け、神田晃宏氏という画家を見いだして炯々爛々としてる感触が、このうえなくイイのであって、店は閉めていても、3歩4歩と歩んでいるらしき気配が、こたびのポストカードに反映していると感じて、当方……、密かに大いに喜んでいるのだった。

 ま~、だからそれゆえ、このカードに魅了されているワケですな。

 今年もまた色々な方に色々なカードをもらったけど、うむうむ、年末直前のこれがハイライトかもだ、にゃ。